2004 第4回生物学特別講義 

「大腸菌の形質転換系を用いた遺伝物質の同定」 

2004年9月9日(木)・10日(金)  13:00〜16:00


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場所:    神奈川県立逗子高等学校 生物実験室 C館2階

講師:    東邦大学理学部生物分子科学科 助教授 博士(医学) 佐藤浩之先生

参加者:   3年生物U選択者  30名


講義のねらい


生物Tの教科書で扱われているアベリーの実験を大腸菌を使って再現し、DNAが遺伝子の本体であることを確認させます。
アベリーの実験は初めての遺伝子組み換え実験でもあります。プラスミドを使った遺伝子組み換えの原理を理解し、あわせて遺伝子組み換え技術が社会に与える影響についても考えさせます。
大腸菌を使ったバイオテクノロジー実験を体験させます。


概要

アベリーの実験 (米1944年)

肺炎双球菌には病原性のある系統と病原性のない系統があります。病原性のある菌の抽出物を、病原性の無い菌に加えると、病原性の無い菌が病原性を持つように変化します(形質転換)。

抽出物をDNA分解酵素で処理をすると、形質転換は起こらず。タンパク質分解酵素で処理をしても、形質転換は起こります。

このことから、形質転換を引き起こすDNAが遺伝子の本体である可能性が高い事をしめした実験です。

今回の特別講義は、アベリーの実験を、肺炎双球菌の代わりに大腸菌を、病原性の遺伝子の代わりにGFP(緑色の蛍光を発するオワンクラゲ由来のタンパク質)とDS-RED(サンゴ由来の赤色のタンパク質)の遺伝子を使って再現したものです。

 
一番左が佐藤先生。後はアシスタントです。 大腸菌などのサンプルです。使うまで氷冷しておきます。
DNAを取り出す大腸菌(DNA供与体)を入れたチューブに界面活性剤を入れブロックヒーターで加熱をします。膜が壊れDNAが抽出されます。 佐藤先生の指導を受けています。
DNAを組み込む大腸菌に形質転換溶液とDNA供与体の抽出液を加えヒートショックを与えます。DNAが菌内に取り込まれます。ヒートショックが終わったらすぐに冷却し新しい培地を加え、死にかかっている菌を回復させます。 寒天培地をシャーレに流し培地を作っています。培地にはアンピシリンと呼ばれる抗生物質が加えてあります。
正確に量を量って菌を培地にまきます。 コーンラージ棒と呼ばれるガラス棒でまいた菌をよく培地にこすりつけます。まいた菌の液が流れないようにしっかり刷り込むようにします。
各班9枚の培地にそれぞれ異なった処理をした菌をまきます。結果を予想しておくことが大切です。 シャーレは裏返しにして、37℃で翌日まで培養します。

2日目です。 培養した結果を確認します

DNA供与菌にはアンピシリン(培地に混ぜた抗生物質)耐性遺伝子とDS-RED(サンゴからとった赤い色のタンパク質の遺伝子)またはGFP(オワンクラゲからとった紫外線を当てると緑色に光るタンパク質の遺伝子)が組み込んであります。

遺伝子を組み込む菌は感受性菌と呼ばれ、アンピシリンに対する耐性遺伝子やGFP・DSーREDの遺伝子を持っていません。

したがって遺伝子組み換えに成功するとその菌はアンピシリンを含む培地で生き延びかつDSーREDかGFPを作るはずです。

DNA供与菌の抽出物はDNAを壊す酵素やタンパク質を壊す酵素で処理を行い結果を比較しました。

左の写真はコロニーの数を数えているところです。

培地にまいた菌は1個ずつバラバラになって培地に付着します。一晩たつとそれぞれの菌は数億個に増殖し目に見える固まりを培地上に作ります。この固まりをコロニーと呼びその数は培地にまいた菌の数をと同じです。

遺伝子の組み換えに成功しました。アンピシリンを含む培地上にDS-REDの赤色のコロニーが出来ています。 遺伝子の組み換えに成功しました。アンピシリンを含む培地上でGFPの緑色のコロニーが出来ています。この写真は紫外線を当てて撮影しています。

1班の結果です。

10と100は蒔いた菌の量が10倍違っているものです。

この班の供与菌にはアンピシリン耐性遺伝子とDS-REDの遺伝子が組み込んであります。

1、無処理の供与菌(耐性菌)抽出液を感受性菌に加えたもの→菌が生育→形質転換がおこった。

2、DNA分解酵素で処理をした供与菌抽出液を感受性菌に加えたもの→菌は生育せず→形質転換せず。

3、タンパク質分解酵素で処理をした供与菌抽出液を感受性菌に加えたもの→菌が生育→形質転換がおこった。

4、アンピシリン耐性遺伝子のDNAを感受性菌に加えたもの→菌が生育→形質転換がおこった。

5,感受性菌をそのまま培地にまいたもの→菌は生育せず→感受性菌はこの培地では生育できない。

6,供与菌(耐性菌)をそのまま培地にまいたもの→菌は生育→供与菌(耐性菌)はこの培地で生育できる。

記念写真です。

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