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使用するキットはKit4と呼ばれるもので、ラムダDNAと呼ばれるプラスミド(DNAの断片)を三種類の制限酵素で切断し、生じるDNA断片のサイズをアガロースゲル電気泳動で決定するというものです。
制限酵素はDNA解析や遺伝子組み換えに使用され、きわめて重要なものです。
アガロースゲル電気泳動もDNA解析に使用され、重要な実験方法です。
本年度の生物学特別講義では生物Uの授業の一部としてアベリーの実験を再現する遺伝子組み換え実験を行います。
また、希望者を対象に夏休み中にメダカのDNA解析実験を行う予定です。
そこで、メダカのDNA解析の事前指導をかねて、DNA解析の原理を理解させるために、バイオラッド社のキットを使ってDNA解析の実験を実施しました。
この実験のねらいは次の四点です。
日時:2004年7月8日(木)・12日(月)・13日(火)
場所:県立逗子高等学校 生物実験室
参加者:3年必修生物U選択者 30名
バイオ実験ではμl(1ml=1,000μl)単位で試薬を扱います。そのために、試験管の代わりにマイクロチューブ(エッペンドルフチューブ)容量1.5mlのもの。ピペットの代わりにマイクロピペット(ピペットマン)。卓上遠心機(ちびたん)と言った機材を使用します。
これらの機材の使い方の説明と練習をしました。
マイクロピペットにチップをつけ決まった量の水を計り、マイクロチューブに入れる練習です。
ちびたんとピペットマン(左)
マイクロピペット(ピペットマン) (右)
ダイヤルを合わせるとその容量の液を正確に計りとることが出来ます。
制限酵素はDNAの特定の塩基配列を認識しその部分だけを切断します。
それぞれの制限酵素によってDNAの切断される部位が異なっています。次の図は今回使用した制限酵素が切断するDNAの塩基配列を示したものです。今回の実験はラムダDNAを異なる制限酵素で切断すると、異なる大きさのDNA断片が生じることを確認します。
実験に使用するDNA はラムダDNA(λDNA と表記されます)と呼ばれるファージのDNAです。大きさは48,502塩基対(bp)です。
下の図のように制限酵素HindVで切断すると7カ所が切断され8個の断片が生じます。つまりAAGGTTCという塩基配列が↑の7カ所にあるわけです。
それぞれの断片の大きさは 23,130、9,416、6,557、4,361、2,322、2,027、564、125塩基対(bp)です。
L・P・E・Hとマークした各マイクロチューブに 未切断のラムダDNAの溶液 を4μl入れます。
L・P・E・Hの各マイクロチューブに制限酵素用バッファー(RB)を5μl入れます。
P・E・Hのマイクロチューブに制限酵素をそれぞれ1μl 入れます。
Pのチューブには Pst I、
EのチューブにはEcoR I、
HのチューブにはHind IIIを入れます。
サンプル入りマイクロチューブをフロート(マイクロチューブラックの厚さの薄いもの)にさし、37℃の恒温水槽に約30 分間浮かべ制限酵素を作用させました。
1時間目の授業はここまでで時間になったので、後は先生が行いました。
30分後マイクロチューブを氷上に戻し、次の時間まで、冷蔵庫で保管しました。
制限酵素で切断したDNA断片の大きさをアガロースゲル電気泳動という方法を使って調べます。
DNAは水に溶けるとマイナスイオンになっています。その電荷の大きさは同じです。
DNA分子の水溶液をアガロースゲル(寒天)に入れ電圧をかけると+極に向かってDNAは移動します。
DNAは細長い分子でアガロースは細かい網の目のような構造を持っています。DNA分子はアガロースの網の目に引っかかりながら移動することになります。
DNA分子の持つ電荷の大きさは分子の大きさにかかわらず一定です。
そのため大きいDNA断片ほどゆっくり移動し、小さいDNA断片ほどはやく移動します。
DNA断片の移動距離からDNA断片のサイズを推定することが出来ます。
電気泳動の準備をしています。
電気泳動装置は科学技術振興機構の科学館学校連携教材のフィールドテスト用として提供されたものを利用しました。
ラムダDNAを制限酵素処理したマイクロチューブL・P・E・HとM(DNAマーカーを入れたチューブ)に色素マーカーを2μlずつ加えました。1回ごとにチップを交換しました。
DNAは全く見えないので色素マーカーの移動を見て、電気泳動をいつやめるのかを判断します。このマーカーには動きの速い色素と遅い色素が入っています。動きの速い色素より早く移動するDNA断片はありません。
サイズのわかっているDNA断片が何種類か入っています。
マーカーと比較して各サンプルのDNA断片のサイズを推定します。
今回使用したものはラムダDNAをHindVと呼ばれる制限酵素で切断したもので、生じるDNA断片のサイズがあらかじめわかっています。
23,130、9,416、6,557、4,361、2,322、2,027、564、125塩基対(bp)です。
M・L・P・E・HのサンプルをマイクロピペットP20でゲルのウエルに10μlずつ入れます。
レーン1 M DNAサイズマーカー
レーン2 L ラムダDNA
レーン3 P PstTで処理したラムダDNA
レーン4 E EcoRIで処理したラムダDNA
レーン5 H HindVで処理したラムダDNA
チップの先端をウェルのすぐ上までバッファーの中に差し入れゆっくりとマイクロピペットのプッシュボタンを押しました。
DNAサンプルの密度はバッファーより大きいのでゆっくりと沈みます。チップを深く入れすぎてゲルを傷つけないように注意します。
授業時間内には電気泳動の終了まで収まらないので、タイマーをセットして授業は終了。
電気泳動中です。
電気泳動が終わったゲルはミューピッドブルーDNA染色液で染色をしました。
ライトボックスに載せたゲルです(左)
この染色液はエチジウムブロマイドと異なり、紫外線を当てないで観察が出来、安全なものです。
しかし、染色が今ひとつ薄くバンドが見にくかったのは残念でした。
ライトボックスの上にゲルを置き写真を撮りました。(右)
染色が薄かったので、画像処理をしてコントラストを高くしたプリントを準備しました。
ここまでは先生が準備しました。
画像処理したゲルの写真
M DNAマーカー (ラムダDNAを HindVで切断したもの)
L 未処理のラムダDNA
P ラムダDNAをPstTで切断
E ラムダDNAをEcoRIで切断
H ラムダDNAをHindVで切断
H、E、PはLのラムダDNAを異なる制限酵素で切断したものです。H、E、PはそれぞれラムダDNAより小さな異なる大きさの断片に切断されたことがわかりました。
M(DNAマーカー)は試薬メーカーがラムダDNAをあらかじめHindVで切断をしたものです。
Hは今回の実験でラムダDNAをHindVで切断したものです。
MとHのバンドが同じなので、今回の実験の制限酵素処理はうまくできたことがわかります。
DNAマーカーのバンドは全部で6本確認できるはずです(このゲルでは4本目のバンドは確認できませんが)。
それぞれのバンドのDNA断片のサイズは次の大きさであることがわかっています。このサイズを基準にして、他のバンドのDNAのサイズを推定することが出来ます。
バンド1 23,130 bp
バンド2 94,16 bp
バンド3 6,557 bp
バンド4 4,361 bp (確認できませんでした)
バンド5 2,322 bp
バンド6 2,027 bp
単位はbp塩基対です。
DNAマーカーの各バンドの移動距離を物差しで測り、一覧表に書き込みました。
DNAの移動距離とDNAのサイズは単純に比例しているわけではないことがわかります。例えばバンド6はバンド1の2倍の移動距離ですが、DNAのサイズは1/10以下です。
そこで、片対数グラフ用紙に移動距離とDNAサイズの関係をしめす点を打ちました。横軸に移動距離を縦軸にDNAのサイズをとります。片対数用紙を使うとほぼグラフが直線になります。
このグラフを検量線(標準曲線)と呼びます。
例えば、移動距離24.5mmの場合。赤い矢印のようにたどって、DNAのサイズは9,000bpと推定できます。
同じようにして、グラフが直線になる部分を使って、それぞれのDNA断片の移動距離からDNAサイズを推定し、一覧表に書き込みました。
この様にして、電気泳動の結果からDNA断片のサイズを決めることが出来ます。
電気泳動の結果は染色は薄かったのですが、きれいにでました。電気泳動の原理と制限酵素の働きは良く理解できたと思います。
DNAサイズの推定は、班によってはDNAマーカーのバンドが123の3つしか確認できず、うまく検量線が引けなかった班がありました。バンド1は直線からはずれるので、バンド1,2,3の三つではどのバンドが直線からはずれるのかわからず、検量線が引けません。
原因は電気泳動の失敗ではなく、染色が薄かったことです。ミューピッドブルーの染色は以前使ったときにはよく染まっていました。染色液が古かったことが良くなかったのかもしれません(1年前の使用済み液を再利用しました)。
片対数グラフは初めて見る生徒がほとんどで、目盛の取り方がなかなか理解できない生徒がいましたが、最終的には何とか出来ました。
この実験はシンプルな実験で、制限酵素の働きと電気泳動の原理を理解させることだけに特化しています。そのために、結果の考察がわかりやすく、DNA解析の準備として行う実験として最適であると思いました。
マイクロピペットと遠心分離機、電気泳動装置など、バイオ実験の機材を取り扱う経験が出来ました。高校生は覚えがはやく、すぐに使い方に慣れました。
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