第1回分類 第1回詳細1 第1回詳細2 第2回培養細胞 第2回詳細 第3回メダカ 第3回詳細 第4回遺伝子組み換え 第4回詳細
特別編1培養細胞 特別編2ウニのクローン 総合学習@GFP 総合学習Aクロマト 総合学習B電気泳動 生物UラムダDNA解析
この部分は、メンデルの法則を知らない1,2年生の参加者のために(忘れてしまった3年生のためでもありますが)、予習用として事前に配付したテキストの一部です。
遺伝形質
生物は様々な形や性質を持っています。これを「形質」と呼びます。
形質の中には親から子へ伝わるものがあります。この現象を「遺伝」と呼び、親から子へ伝わる形質を「遺伝形質」と呼びます。
これ以降「遺伝形質」のことを単に「形質」と呼びます。
遺伝しない形質は「獲得形質」と呼びます。
「形質」は親から子へ単純に伝わるわけではありません。
実際の遺伝
生物室では黒いメダカと黄色いメダカを飼っています。この黒いメダカと黄色いメダカを掛け合わせると子は全て黒いメダカになります。
子の黒いメダカを育て、この黒いメダカどうしを掛け合わせると子(最初の黒と黄色のメダカの孫)は黒いメダカが3/4、黄色いメダカが1/4の割合で生まれます。
最初の親をP。
Pの子をF1。
F1の子をF2と呼びます。
どうしてこのようなことになるのでしょうか。
生物は自分の体の設計図である遺伝子を2セット持っています。1セットは母親からもう1セットは父親からもらったものです。
1セットの遺伝子をゲノムと呼んでいます。ヒトの場合ゲノム中の遺伝子は全部で3万ぐらいあると考えられています。
メダカの体色は黒い色素が作られると黒く、作られないと黄色くなります。
黒いメダカも黄色い色素は持っています。ひれなどを見ると黄色い色素があることがわかります。
そこで黒い色素を作る遺伝子を「黒遺伝子」、
黒い色素を作らない遺伝子を「黄遺伝子」と呼ぶことにします。
親(P)の黒いメダカは「黒遺伝子」を2つもっています。
親(P)の黄色いメダカは「黄遺伝子」を2つもっています。
2匹の親は持っている二組の遺伝子のうち一組だけを卵や精子(配偶子)に入れます。
卵や精子のことを配偶子と呼びます。
このとき行われる遺伝子を一組に減らす細胞分裂を減数分裂と呼びます。
黒いメダカは「黒遺伝子」を一つ持った配偶子を、黄色いメダカは「黄遺伝子」を一つもった配偶子を作ります。
受精
この配偶子どうしが受精して二つの遺伝子を持つ子(F1)が生まれます。
したがって、子(F1)の黒いメダカは黒遺伝子を一つと黄遺伝子を一つ持っています。
この場合、黒遺伝子が黄遺伝子より強いので黒い色素が作られ、子メダカ(F1)は黒いメダカになります。
黒遺伝子は強いので「優性遺伝子」。黄遺伝子は弱いので「劣性遺伝子」と呼びます。
優劣の関係がはっきりしない場合は中間型が生じます。
F1の子(F2)は親であるF1から黒い色素に関する遺伝子を両親から一つずつもらいます。
両親(F1)は「黒遺伝子」と「黄遺伝子」を一つずつ持っています。そのうちどちらか一つを配偶子に入れます。
その結果、両親(F1)は「黒遺伝子」を持つ配偶子と「黄遺伝子」を持つ配偶子の二種類の配偶子を作ります。
両親(F1)が二種類の配偶子のどちらを子(F2)に渡すのかは全くの偶然によって決まります。
したがって、子(F2)が持つ遺伝子の組み合わせは次のようになります。
黒遺伝子を一つずつもらう場合
遺伝子は 黒・黒で 体色は 黒
黒遺伝子と黄遺伝子を一つずつもらう場合
遺伝子は 黒・黄 で 体色は 黒
黄遺伝子を一つずつもらう場合
遺伝子は 黄・黄で 体色は 黄
このとき持っている遺伝子の種類を「遺伝子型」、実際の体色を「表現型」と呼びます。
これを記号で示すこともできます。
黒遺伝子をB、黄遺伝子をbで示します。(優性遺伝子を大文字で劣性遺伝子を小文字で示します)
遺伝子型はBBで表現型は 黒
遺伝子型はBbで表現型は 黒
遺伝子型はbbで表現型は 黄です。
また1と3のように同じ遺伝子をふたつもっているものを「ホモ」、異なる遺伝子を一つずつ持っているものを「ヘテロ」と呼びます。
1は優性遺伝子のホモなので優性ホモ、3は劣性遺伝子のホモなので劣性ホモと呼びます。
そうすると右の図のようにF2では
黒と黄色が3/4対1/4の割合で生じることがわかります。
この仕組みは19世紀中頃にオーストリアのメンデルによって発見されました。しかし彼の考えは認められず。彼の死後、1900年にやっと認められることになります(メンデルの再発見)。
この部分は、一般向けの生物学実験の公開講座「やさしい生物学U」でバイオラッド社の「キット5」を使って行ったテキストの一部です。
DNA解析の基礎的な技術である、制限酵素断片長多型(RFLP)によるDNA鑑定を体験するものです。
殺人事件発生
現場には凶器は残されていませんでしたが、犯人もけがをしたらしく、犯人のものと思われる血痕が残されていました。
DNA鑑定
まもなく、警察の捜査線上に5人の容疑者が浮かびました。しかし、決定的な証拠が無くDNA鑑定を行うことになりました。
現場から届いたサンプルを使いこれからDNA鑑定を行わなくてはなりません。
あなたは現場に残された血痕のサンプルから犯人のDNAを取り出すことに成功しました。5人の容疑者のサンプルからもDNAを取り出しました。
PCR
DNAには個人によって塩基配列が異なっている部分があります。この部分の塩基配列が同じであれば同じ人物のDNAと判断できます。
その部分だけをPCRと呼ばれる方法で増幅しました。
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)とは、DNAのコピーをDNAポリメラーゼを使って大量に作る方法です。
大変感度が高い方法で理論的には1分子のDNAから数時間で10億分子程度に増やすことが出来ます。
犯人のDNAのサンプルはCS、5人の容疑者のDNAサンプルはそれぞれS1、S2、S3、S4、S5と呼しました。
CSと同じDNAを持つ容疑者が犯人です。
あなたは次のような方法でDNA鑑定を行うことになりました。方法は「制限酵素断片長多型(RFLP)」Restriction fragment Length Polymorphismです。
制限酵素とはDNAの特定の塩基配列を認識しその部分を切断します。
今回はDNAのサンプルをEcoRTとPstTと呼ばれる二種類の制限酵素で切断します。この制限酵素はそれぞれ次に示すような塩基配列を認識し、矢印の部分で切断します。
制限酵素が認識する塩基配列はパリンドローム(回文)と呼ばれ、180度回転させても同じになっています。
制限酵素の切断部位
注 5'、3'はポリヌクレオチドの方向を示す。5'はリン酸で終わる末端を、3'は糖(デオキシリボース)で終わる末端を示す。
同じDNAは同じ部分が切断される
制限酵素が切断するパリンドロームは同じ塩基配列を持つDNAであれば必ず同じ場所にあるはずです。
したがって、生じるDNAの断片の数とその大きさを調べることが出来れば。同じ塩基配列を持つDNAならばDNA断片の数と大きさは同じになります。
異なる塩基配列を持つDNAではパリンドロームの位置が異なるので、生じるDNA断片の数と大きさは異なるはずです。
制限酵素断片長多型RFLPの原理
もちろん、異なる塩基配列を持つDNAであっても偶然同じ数と大きさのDNA断片を生じる可能性はあります。制限酵素の種類は100種類近くあり、それぞれ異なるパリンドロームを認識するので、多くの種類の制限酵素を使えば、偶然の一致を減らすことが出来ます。
電気泳動
制限酵素で切断したDNAのサンプルのDNAのサイズを測定します。
DNAは水に溶けるとマイナスイオンになります。そのために電圧をかけると+極に向かって移動します。
この性質を利用し、DNAのサンプルをアガロースのゲル(寒天の板)に入れ、電圧をかけるとDNAの断片は+極に向かって移動します。
アガロースの分子は網目がからまったような構造をしているため、DNAの断片はこの網目に引っかかりながら移動します。
そのため、大きいDNAの断片は小さい断片と比べて移動に時間がかかり、小さいDNA断片は早く移動します。
そのため、適当な時間、アガロースゲルに電圧をかけた後、DNA断片の移動距離を調べればDNA断片の大きさがわかります。
ゲルの染色
DNAは無色で目に見えないので、DNAを染色し、DNAの移動距離を調べます。
ゲルの写真では、犯人のDNAと容疑者3のバンドパターンが同じなので容疑者3のDNAは犯人のものと同じである可能性が高い。つまり容疑者3が犯人である可能性が高いと判断できます。
DNAには数塩基対〜数十塩基対程度の、意味のない繰り返し配列が多数存在します。この繰り返し回数が人によって異なっているのです。
2〜5塩基の繰り返しをSTRまたはマイクロサテライトと呼び、5〜30塩基の繰り返しをVNTRまたはミニサテライトと呼びます。
繰り返し配列の繰り返し回数を調べる
この繰り返し回数は個人によって異なっているため、繰り返し回数を調べることで個人を特定することが出来ます。
マイクロサテライトやミニサテライトの部分をPCRによって増やし、電気泳動によってそのDNAのサイズを決めます。
例えば5塩基の繰り返しからなるミニサテライトで繰り返し部分のサイズが100塩基あれば繰り返し回数は20回とわかります。
繰り返し回数の違いが100通りあるとするならば、同じミニサテライトはもう一方の相同染色体にもあるので、その種類は100×100=10,000種類あることになります。
仮にこの部分だけを調べたとするならば、別人が偶然同じ繰り返し回数を持つ確率は1/10,000ということになります。
このような場所を何カ所か調べることで個人の特定が可能です。
PCRとは元々DNAの決まった領域を増やす方法です。
PCRに使うプライマーを特定の遺伝子にしかない塩基配列の部分と相補的なもの(結合できる)にすることで、PCRでDNAが増えればその遺伝子があり、増えなければその遺伝子がない事がわかります(メダカのDNA解析ではこの方法を使いました)。
SNPS(スニップス)
塩基配列が1塩基だけ異なるもの、この一塩基の違いがさまざまな病気の原因になっていることがわかってきました。SNPSを簡単に検出するためにDNAチップが注目されています。
DNAチップと呼ばれるスライドグラス状のチップの上に、様々な遺伝子の一本鎖DNAが張り付けてあります。
サンプルの一本鎖DNAの溶液を滴下します。もしサンプルがチップ上の遺伝子と同じDNAを持っていれば、チップ上の遺伝子のDNAと結合し二本鎖になります。
チップでは二本鎖になるとその程度に応じて色が変化するように工夫されていて、チップを顕微鏡で見れば、どのDNAが二本鎖になったのかわかります。
二本鎖になったDNA(遺伝子)と同じものをサンプルは持っていると考えられます。
この方法はSNPSを調べるのに有効です。
DNAチップの原理
一本鎖のDNAをいきなり2本鎖に複製することは出来ません。
一本鎖に二本鎖の部分があれば、その部分から二本鎖がのびていき全体が二本鎖になります。
一本鎖のDNAに短いプライマーと呼ばれる短い一本鎖DNA断片を加えると、プライマーは一本鎖DNAのプライマーと相補的な塩基配列の部分を探しだして結合します。このプライマーを基点として二本鎖DNAが合成されます。
そこで、増やしたいDNAの部分をはさむ場所に結合する二種類のプライマーを使うことで、二種類のプライマーにはさまれたDNAの部分のコピーを沢山作ることが出来ます。
この反応は、温度の上下だけで連続して進行させることが出来ます。
PCRはバイオテクノロジーに革命をもたらし、開発者のキャリー・マリスはノーベル化学賞(1993)をもらいました。
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