2004 第3回生物学特別講義 

メダカを使った交配実験・表現型とDNA解析による遺伝子型の決定によるメンデルの法則の実証」 

2004年7月23日(金)   8:30〜12:30
        26日(月) 13:00〜16:00

        27日(火) 13:00〜17:00


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場所:    神奈川県立逗子高等学校 生物実験室 C館2階

講師:    東京大学大学院 理学系研究科 講師 成瀬 清先生、技術官 島田 敦子先生

参加者:  希望者 (3年生物U選択者が8名、1・2年の希望者が各1名) 計10名


講義のねらい

講義の内容の記録

1日目 メダカの人工受精を行います

メダカを解剖し卵巣と精巣を取り出します。これは赤メダカのメスから卵巣を取り出しているところです。

メダカを氷水で冷やして動かなくなってから双眼実体顕微鏡で見ながら解剖します。シャーレにパラフィンを流した台の上に虫ピンでメダカを固定しjます。

取り出した卵巣です。メダカ用のリンガー液に入れます。真水に入れると受精能力をすぐに失ってしまいます。

取り出した精巣です。精巣は小さく(とくに黒メダカでは)とりだすのはちょっと難しいです。 成瀬先生が解剖をやって見せています。先生は顕微鏡を使わずに肉眼でやってしまいます。神業?です。
時計皿の中で受精させます。精巣をリンガー液の中でしごいて精子の入った液を作り未受精卵の入った時計皿にまぜてやります。これは受精卵です。囲卵腔が出来ているのがわかります。
まわりについている付着糸をとるためにキッチンペーパーの上に卵を置いて指の腹で転がしてやります(付着糸にはカビが付きやすく観察の妨げにもなるので出来るだけ取り除いてしまいます)。

赤メダカ(系統名T5)×赤メダカ  
赤メダカ×黒メダカ (系統名HNI)
F1(T5とHNIをかけ合わせたもの)×F1
の三つの組み合わせで人工受精させシャーレに入れておきます。 30度を超えると良くないので涼しいところにおいておきます。

2日目です 人工受精の結果を調べます。表現型がメンデルの法則通りになるでしょうか。

シャーレを実体顕微鏡で見ています。 正確に数を数えるために、胚を一つずつマルチプレートに入れていきます。胚を痛めないように先の太いピペットを使います。液が青いのはメチレンブルー(カビの増殖を抑える)を入れてあるからです。
表現型の見分け方の説明を島田先生がしています。 島田先生が表現型を確認しています。赤ブチの見分け方は少し難しいです。生徒が判断したものはほとんど間違いがありませんでした。
「黒」 全体に黒色色素胞細胞があります 「ブチ」 黒の中には卵黄のうの部分には黒色色素胞細胞がないものがあります。この写真ではわかりませんが眼の部分の色素もマダラになっています。これをブチと呼びます。
「赤」 黒色色素胞がありません 「赤ブチ」 赤の中に眼の色素がマダラになっているものがいます。これを赤ブチと呼びます。

F1どうしをかけ合わせたF2の表現型を数えました。
黒:ブチ:赤:赤ブチ=9:3:3:1になるはずです。

実際に数えたのは55個です。期待値は
黒:ブチ:赤:赤ブチ=31:10:10:3
実際には 黒:ブチ:赤:赤ブチ=25:14:13:3
まあまあうまくできたと見て良いでしょう。
分離の法則が確認できました。

黒(黒+ブチ):赤(赤+赤ブチ)=38:17
ブチでない(黒+赤):ブチ(ブチ+赤ブチ)=39:16
微妙な値ですが(理論値は3:1)サンプルが少ないのでよしとしましょう。
独立の法則が確認できました。

赤×赤は全て赤になりました。
赤×黒は全て黒になりました。
優性の法則が確認できました。

表現型を確認してあるF2の胚を各班8個ずつすりつぶしてDNAを抽出しています。界面活性剤を含む液を加えます。 すりつぶした胚は熱を加えてDNAを抽出します。マイクロチューブをブロックヒーターにセットしています。界面活性剤と熱によって細胞膜や核膜などの膜が壊れます。
今回はサンプルの量が少ないので、DNAをフィルターに吸着させる最も確実な方法でDNAを取り出しました。DNAを吸着させるフィルターです。フィルターの上部にサンプルを入れ遠心分離することでサンプルをフィルターに通します。 フィルターを何回かバッファーで洗い不純物を除去します。最後にDNAを溶かし出して下のチューブに溶液として回収します。

サンプルを三つにわけてそれぞれに遺伝子1、2,3を増幅するプライマーと他の試薬を加え、サーマルサイクラーにセットします。

サーマルサイクラーは自動的に働き、数時間で必要なDNAのコピーを大量に作ります。

3日目 PCRを行ったDNAを電気泳動によって調べます

PCR用のチューブに電気泳動用のバッファー(青い色素が入れてあります)を加えています。 実験風景です。電気泳動について説明をしています。
アクリルアミドゲル電気泳動を行います。電気泳動の原理について説明をしています。 サンプルをゲルに入れています。アクリルアミドのゲルを上から下に向かって泳動します。分子量の小さいDNA断片ほど早くしたに移動します。
マルチピペットを使えばいっぺんに8レーンにサンプルを入れることが出来ます。 電気泳動には2時間もかかりました。ゲルをエチジウムブロマイドで染色し紫外線を当てるとDNAのバンドが光ります。エチジウムブロマイドには発ガン性があるので手袋をします。紫外線は眼に害があるので紫外線よけのゴーグルをします。

黒のレーンを見るとバンドが上に出ています。この個体が黒遺伝子Bと連鎖しているマーカーを持ちます。T5のレーンを見るとバンドが下に出ています。この個体は赤遺伝子bに連鎖しているマーカーを持ちます。F1のレーンを見るとバンドが上と下の両方に出ています。この個体はヘテロBbと見ることが出来ます。
この遺伝子(遺伝子2)は染色体上で体色遺伝子と少し離れているのでその間で組み換えが起こっている可能性があります。
3の個体の表現型は黒なのでバンドは上のみか上と下に出るはずなのに下にしか出ていません。組み換えが起こったと考えられます。予定では体色遺伝子と連鎖していてすぐ近くに存在するマーカー(遺伝子1)、連鎖しているが少し離れているマーカー(遺伝子2)、連鎖していない無関係のマーカー(遺伝子3)を比較する予定でしたが、遺伝子2しかはっきりバンドが出なかったため、遺伝子型を確定し、さらに組み換え価を計算することは出来ませんでした。

上の結果は4班の遺伝子2(連鎖しているが体色遺伝子と少し離れているので組み換えが起こっている)のものです。

1班から4班の表現型と遺伝子2の遺伝子型です。遺伝子型と表現型に一部矛盾があるのは体色遺伝子とマーカー(遺伝子2)は連鎖しているが染色体上で少し離れているために組み換えが起こっているためです。

今回の実験のまとめです。

実験の詳細 (工事中ですしばらくお待ちください)


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