2005 神奈川県立逗子高等高校
生物学特別講義 実物に触れる生物学2005
「細胞
組織発生遺伝分類 とDNA」

SPP(サイエンス・パートナーシップ・プログラム) 2005年5月27日〜10月10日


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第1回分類  第2回ウニの発生  第3回メダカの遺伝  第4回培養細胞


はじめに

逗子高校の生物では2002年度から毎年大学の研究者に講師を依頼して実験・実習を行う「生物学特別講義」を行っています。

このHPは「生物学特別講義・実物に触れる生物学2005」の記録です。2005年度5月〜10月に4回、計9日間実施したものです。

高校の生物の教科書には様々な生物が登場します。細胞やDNAについても学びます。しかし、それらの実物に触れる機会はあまりありません。

普段触れることの少ない「磯の動物」と「培養細胞」の観察と実験、「ウニ」の発生の観察と分裂装置の観察、「メダカ」を使ったメンデルの法則の実証実験を実施しました。

特別講義は次のようなねらいを持って行いました。

本年度の生物学特別講義は引き続き「サイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)・研究者招へい講座」として実施することができたため、内容を充実させることができました。

順次各回の詳細な報告をのせたいと思います。


第1回 「磯の動物の観察と採集 動物のボディプランとDNA」

日時: 5月27日 9:00〜17:00

場所: 東京大学大学院 理学系研究科 附属臨海実験所(三崎臨海実験所)

講師: 東京大学臨海実験所 吉田 学 先生  佐藤 寅夫先生  東郷 建 先生

内容: 現在生きている動物の基本的な全てのタイプ(ボディプラン)は約6億年前の海の中で進化しました。これが現在門と呼ばれる最も大きな分類群です。磯ではほとんど全ての門に属する動物を観察することが出来ます。

生物学の勉強はまずこの海の動物の観察から始めるべきです。

大潮の日の干潮時に磯の動物の観察と採集の実習を行いました、採集した動物は実験室に持ち帰り、佐藤先生の指導の元、各班で門レベルの分類を行い、その後さらに詳細な分類を行い、動物系統分類学の講義を受け、班毎に分担をしてスケッチをしました。後日逗子高校でスケッチをまとめて班毎にポスターにまとめました。


第2回 「ウニの発生の観察と蛍光顕微鏡による分裂装置の観察」

日時: 7月27日11時〜17時 ・28日10時〜16時

場所: 東京大学大学院 理学系研究科 附属臨海実験所(三崎臨海実験所)

講師: 東京大学臨海実験所 赤坂 甲治 先生  吉田 学 先生  東郷 建 先生

内容: 1日目:ウニ(タコノマクラ)の人工受精を行い初期発生の観察を行う。ホルモン剤の注射により採卵、採精を行い受精の瞬間を観察する。卵割の様子も観察をする。32細胞期まで発生が進んだところで胚を固定する。チューブリンと呼ばれる分裂装置を作っているタンパク質を抗原として認識する抗体を利用して、チューブリンを蛍光色素で染色をする。抗原抗体反応の原理に関する講義も行う。

2日目:前日に処理をした分裂装置の蛍光顕微鏡による観察を行う。平行して前日から継続しているウニの発生の観察を行う。うまくいけば原腸胚期まで発生が進んでいるので原腸陥入などの形態形成に関する講義も行う。


第3回  「メダカを使った交配実験・表現型とDNA解析による遺伝子型の決定によるメンデルの法則の実証実験」

日時: 7月29日(金)9:00〜13:00  8月1日(月)・2日(火)13:00〜17:00

場所: 県立逗子高等学校 生物実験室

講師: 東京大学大学院 理学系研究科 講師 成瀬 清先生、技術官 島田 敦子先生

内容: 1日目:メダカの人工受精の方法や雌雄の見分け方などメダカに関する講義を受け、体色に関する劣勢突然変異体のメダカ(赤メダカ)と野生型メダカ(黒メダカ)の人工受精を行いました。あらかじめ準備したF1どうしの人工受精も行いました。

2日目: 1日目に人工受精させた胚を顕微鏡で観察し、F1個体がすべて野生型になること確かめ、優性の法則が成立することを確認できました。F2については二組の対立形質について調べ、その表現型が 黒:黒ブチ:赤:赤ブチ=9:3:3:1に分離することを確かめ、分離の法則、独立の法則を確認できました。
さらに、遺伝子型を調べるために、F2個体からDNAの抽出をおこない、遺伝子の増幅(PCR)を行いました。

3日目: 2日目PCRを行ったDNAの電気泳動を行い、解析をしました。体色遺伝子座と連鎖しているDNAマーカーを調べました。体色遺伝子と、体色遺伝子の近くにに存在するDNAマーカーとの間には組み換えは起こらないことを確認し(表現型と遺伝子型が矛盾しない)遺伝子型を推定しました。体色遺伝しから離れたDNAマーカーでは一部遺伝子型と表現型が矛盾し、異なる遺伝子型が推定される(体色遺伝子座との間で組み換えがおこる)ことを確認しました。実際には体色遺伝の近くのDNAマーカーの結果がはっきりしなかったので正確に遺伝子型を推定することは出来ませんでした。


第4回「魚類培養細胞による生体由来物質による形態形成に関する基礎実験」

日時: 10月6日(木)・7日(金) 13:00〜17:00 

場所: 県立逗子高等学校 生物実験室

講師: 東京海洋大学 海洋科学部 羽曽部 正豪 先生

内容: 1日目:魚類の培養細胞を観察し、さらに蛍光顕微鏡を用いてミトコンドリアや細胞骨格などの細胞器官の観察を行う。蛍光顕微鏡の原理や観察方法に関する講義も受ける。これらの観察方法はミトコンドリアに特異的な酵素や特定のタンパク質(アクチン)を染色している。細胞の機能は様々な細胞器官によって担われていることを学ぶ。

2日目:魚類の培養細胞をシャーレの底にコラーゲンを塗布しその上に接着伸展させ細胞の単層シートを作る実験を行なう。これは昨年の行った培養細胞による文字書き実験を発展させたものである。条件を様々に変えて実験を行う。この実験と前日の細胞骨格などの観察を通して、細胞が組織を作るメカニズムについて学ぶ。また、細胞の培養方法や観察方法等についても学習する。


SPP(サイエンス・パートナーシップ・プログラム)について

生物学特別講義は文部科学省のサイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)として認められました。
SPPとは大学等の研究者を学校に招いて実験実習を中心とした授業を行う場合、企画内容が認められれば、講師料や機材を購入する予算の援助が受けられる制度です。

この制度を利用することで、高校では困難な高度な技術や機材を必要とする実験が可能になります。


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理科 野村 浩一郎